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飯豊山の自然が育て守った
素朴にして深遠なるそば文化 山都町そば資料館


柴田書店「そば・うどん」第24号掲載
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  山都は「やまと」と読む。東西に広がりをもつ福島県の西北に位置し、東北のアルプスとの異名を
  もつ飯豊連峰のふところ深くに抱かれた、人口5000人の静かな町である。会津若松から車で40分、
  鉄道も同じくらい、その先は山だけという文字どおり山の都である。
  (中略・山都町そば資料館に関する記事は割愛させていただきました)

  宮古は山都の町中からさらに山奥に入ったちころにある小さな集落である。標高が高く良質なそばが
  取れ、昔からのそば食文化があった。それも山間部によくある米の代用としてのそばではなく、
  振る舞い、もてなしのそばという意味あいが強く、結婚式、正月、誕生祝い、祭り、お盆といっては、
  そばを打ち、食べるごちそうそばである。

  そのためか、田舎のそばにありがちな穀まで挽きこんだ黒くぼそぼそとしたそばではなく、むしろ
  白く透明感があって、細く、つるつるした食感のそばなのである。製法も、一切のつなぎを入れず
  そば粉だけを熱湯と水でこねる、大変に独自性のある打ち方である。

  以前から、新そばや年越しそばといっては、遠方からわざわざ食べにくるそば好きもいたほどで、
  知る人ぞ知る隠れそばの里なのであった。

  この宮古そばを、農業食堂とでもいうのだろうか、ふだんは農業をしているかたわら、予約で
  そばうちを提供するという形でアピールしたのである。打ちたてのそばと、地元でとれた山菜や
  川魚の郷土料理が、豊かな自然の中の民家で、土地の人々の温かいもてなしの心とともに味わえる。
  他にはないそばの里である。

  そばはあくまで地元産、それを直前に製粉して、来訪に合わせて、打つ。使う水は飯豊山から流れ出る
  清冽な湧き水。なんという贅沢であろう。しかし、これこそが、宮古の、そして山都のそばの原形
  なのである。

  こうした、そば栽培から手打ちそばの提供まで、地元に根ざしたそばの食文化が山都の町おこしの
  核となった。


 


   1.山の中にすっぽりある宮古の集落。36戸のうち現在12軒が予約でそばを提供している。

   2.みどりに囲まれた「いしい」。裏山から清水も湧き、山葵も自生する。この自然もまたおいしい。

   3.手打ちを披露してくれた「いしい」の石井民衛さんとマサ子さん。

   4.宮古の予約制そばでは、郷土料理とそばが出される(3500円で統一)。あさつきの根、山うど、きのこ、
    韮の茎など地元の山菜やにしんの天ぷら、山椒漬けなどが並ぶ。もちろん時期により内容は変わる。

   5.「いしい」のそば。つやがあり、喉ごしもいい。かつて、茄で上げのそばを洗ってすぐ、水のしたたる
    ようなものを食べたのが旨いことから、水そばと言われるようにもなったとか。旨いそばつゆもいらない、
    山からの湧き水がさらにそばの味を引き立てる。
 


※写真は柴田書店「そば・うどん」第24号より使わせていただきました。

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